しあわせ。
「ねぇ、涼(りょう)と涼香(りょうか)の幸せってどんなとき?」
幸せ。
「私は家でのんびり過ごしてる時間が好きかなー」
「俺は飯食ってるときが至福だな」
なるほど、幸せ。
「涼の幸せって小さいね」
「幸せに大きいも小さいもないだろ⁉」
そうだろうか。
そんなことはないと思う。
「じゃあ、真央(まお)の幸せはなんなの?」
「私?私はもちろん、正人(まさと)さんと一緒に居られるだけで、毎日が幸せ」
「「のろけかい」」
ゆるいしゃべり方で涼と涼香の声がハモった。
いいじゃない、休み時間にのろけるくらい。
私、下野真央(しものまお)はこの専門学校の2年。
今、目の前で携帯をいじりながら「あ、この服買おう」とネットショッピングを楽しんでいる三ノ宮涼香(さんのみやりょうか)と、お弁当を食べ終えて鞄の中からお菓子を取り出した四ノ宮涼(しのみやりょう)の3人で居るここは、服飾の専門学校のミシン教室。
二人共同じクラスで、ただいまお昼休憩につき、ゆったりまったり雑談中。
「んで?どうしてそんな急に幸せの話になったわけ?」
「ん?私以上に幸せな人が存在するのかどうかが気になって」
「まてまて、だから幸せにそんな差とかないだろ?」
「いや、ごめん、本当に私幸せすぎて怖いから」
「真央・・・引くよ」
「だってー!」
お昼休憩の残り時間20分をフルで使って、私ののろけ話を散々二人に浴びせた。