「いらっしゃい……」

 真尋は言いかけた言葉を止めた。

 自分の姿を見た瞬間、顔が強張った気がする、と航は思っていた。

 真尋はすぐにいつもの顔で、
「いらっしゃい」
と言いかえる。

「一人?」

 カウンターに行くと、そう訊かれた。
 ああ、と短く答える。

 少し離れて横に座っていた居た女が真尋に訊いていた。

「あれっ?
 もしかして、噂のお兄さんですか?」

「わかる?」
と真尋が笑って言うと、

「そっくりですー」
と女は言っていたが。

 そうか? と思う。

 双子でもないのに良く似ていると子どもの頃から言われていた。

 だが、自分が筋トレが趣味になった頃から、あまり言われなくなっていたのだが。

 まあ、他人よりは似てるかな、と思う。

 単に、今、真尋と似ていると思いたくないだけなのかもしれないが。