は、遥ちゃんだ。

 社食に行こうとした小宮は、柱の陰に隠れた。

 正面からやってきた遥と他の女子社員が笑いながら、社食に向かっている。

 その少し後ろに、新海航が小堺たちと話しながら歩いていた。

 なんで、さりげなく、その位置を取ってるんですか、大魔王様、と思いながら、物陰からそれを見る。

「小宮」

 ぽん、と肩を叩かれ、ひっ、と息を呑んで振り返ると、よりにもよって、大葉が立っていた。

 そっ、そういえば、あっちに居ないっ、と航たちの方を確認して思う。

「なにやってんの?」
と訊かれ、

「……な、なにもやってません。

 やっていませんが、僕が此処に居たことはご内密に」
と言うと、わかった、と笑われた。

「君でも挙動不審になるんだね」

 そう親しみを込めて言われる。

 じゃ、と肩を叩かれた。

 ひとりになり、大葉が敢えて、吞み込んだ部分の言葉を考える。

『恋をすると、君でも挙動不審になるんだね』

 そう言われた気がした――。