そうですっ。
 亜紀さんは、私のことを心配して話を聞いていてくださってるんですっ、と言おうとしたが。

 その弁解も、亜紀が疑われていること前提になってしまうので、どうしようかな、と迷っていると、亜紀が溜息をつき、部長に言っていた。

「いじめられているのは私の方です。
 古賀さんが、再三、のろけたり、阿呆な相談をしてきたりして……」

「あっ。
 阿呆な相談じゃないですよーっ。

 のろけてもいませんっ」

「なによーっ。
 一見、相談だけど、よく考えたら、単にのろけてるだけなんじゃないの? あんたっ」

「ちっ、違いますーっ」

 二人で言い合っていると、部長は笑い、
「まあ、どっちでもいいけど。
 そろそろ始業時間だから、戻って」
と言ってくる。

 元通り、ドアを閉めてくれた。

 それを見た亜紀が表情を止める。

「すみません。
 亜紀さん。

 ……亜紀さん?」

「……ありがとう、遥」

「なにがですか?」

 わかんなきゃいいのよ、と言った亜紀は少し泣きそうに見えた。