「睨んでねぇよ」



いやいや、それは無理があるでしょう。

人があれだけ遠ざかっているんだし、今だってどう見ても『ああん?』といった表情じゃないか。



「……視力が悪いだけだ」



ぽつり、と落とされた言葉にきょとんとする。

視力が悪いだけ。

……って、そんなの、



「眼鏡しなよ!」

「絶対しねぇ」



机を叩くほどの勢いで訴えかける。

予想外だったのか、章はわずかにおののいているけど、ちゃっかり断りを入れることだけはする。

だけどそんなことは関係ない。



眼鏡をするという、そのちょっとの労を惜しむことでどれだけ人間関係に影響しているか。

考えればわかるはずなのに、どうしてしないんだ!



わけわかんない、と内心荒ぶっていると彼はふてくされたような声をこぼす。



「眼鏡は似合わねぇんだよ」



言葉をゆっくりと呑みこんで、あたしは思わず吹き出す。

むすっと黙りこみ、唇を引き結ぶ章。

例のごとく赤く染まる頰が不機嫌な表情の印象を和らげている。



「っふ、はは、可愛い理由!」



似合わないから眼鏡をかけたくない、なんて子どもみたい。

コンタクトとか、他にも手段はあるだろうに、本当なんなの。



赤面症だし、薫先輩に恋する姿は愛らしい。

普段は我関せず、といった雰囲気のくせに眼鏡や告白のことを気にしていたり。

章って意外なところがたくさんある。