彼の大きな掌が自身の金の髪に沈む。

ぐしゃり、とかき混ぜて、普段は前髪に隠されている額が表に出る。

鋭く細められた瞳と視線が交わることはなく、わかっていながらもあたしはただ見つめた。



「────なにがあっても俺を、否定しなかったから」



口が悪くて、すぐに手が出て、怒ってばかりのヤンキー……、とだめなところを上げたらきりがない。

だから彼は今日みたいに心ない言葉を向けられることが少なくなかったんだろう。



それでも彼女との幼馴染としての関係は途切れることなく続いていた。

薫先輩はどんなことがあっても、章のそばにいたんだ。



その眩しいほどの優しさが、彼を救っていたんだね。



章はあたしの目の前でぼろぼろになるまで傷を負って、それなのにその傷を隠して、必死でひとりで立とうとしている。

伸ばされた手にすがることを自分に許しはしない。



冬の空気とストーブの生ぬるい空気が混ざる。

その場をぐるぐると回り、かき混ぜるそれを深く吸いこんだ。



清らかな人、さみしい人、可哀想な人。

章はとても不器用で、誰かが抱き締めてあげなくちゃ、癒してあげなくちゃ、どこまでも傷みを重ねるばかりだ。



だから、優しくてして、……愛してあげたくなってしまう。