人が通ることのない窓の外では木が風に吹かれている。

すっかり葉が落ちていて、寒々しい。

たいした暖房器具がないとはいえこの図書室の方がましだろうと思うけど、もしかするといい勝負かもしれない。



黙りこんだままただ座っている。

その状態を保つあたしの右側の影が小さく身じろぎをした。



「……なんで」



かすれた声が空気を揺らす。

低く響くそれに耳を傾け、あくまで自然を装う。



「なんでなにも言わねぇんだよ」



そんなこと訊かれて、あたしはなんて答えればいいの。

不思議なことなんてなにもないじゃない。



眉が下がり、迷いつつもなにかを言うために薄く唇を開く。



「上野にあそこまでした理由とか、薫たちに八つ当たりしたこととか。
尋ねるためにここに来たんじゃねぇのか」

「別にそういうのじゃないよ」



それにはっきり章から聞いたわけじゃないけど、なんとなくならわかるもん。

不器用な優しさが、どうしようもない心が、紙飛行機のような壊れやすいものでありながらまっすぐに伝わってくるから。



そう思いつつも言葉にすることははばかられて、困ったなぁと首を傾げた。

すると、章がはっと短く息を吐き出すように笑う。