「違反だけじゃなく、成績も悪いし素行も褒められたものじゃない。
3年になる気はあるのか?」



上野先生の担当の数学はあたしも得意じゃない。

だから章に教えることもできず、フォローができなかった教科だ。

他の教科の担当教師だったらここまで言われることはなかっただろうに運が悪い。



上野先生はよほど気に入っている相手じゃないとひどい物言いをするけど、それにしても章に対しては当たりがきつい。

思わず章だけじゃなくあたしもむっとする。



3年になる気がなかったら章のことだ、まず学校に来ていないだろう。

だけど彼はたとえ授業中寝ていることが多くても出席はしている。

学校をやめる様子は見られない。



薫先輩を追いかけて入学して、だけどそれだけじゃない。



努力して、努力して、北冠に受かって。

真面目とは言いがたいけど、それでも章は頑張ることができる人だ。

この前の試験だって順位をぐんと上げたんだから。



それを知らずに適当なことばかり言わないで。

生徒を本当の意味で見ることなく、傷つけるような言葉を選ばないでよ。



唇を強く噛み締める。

変に勢いづくことがないように、睨みつけそうになる衝動をぐっとこらえてうつむいた。



……やっぱり上野先生は嫌いだ。