「薫先輩と章の話はあんたに1番に読ませてあげるね」

「いらねぇ」



端的な切り返しにくすりと笑う。



恥ずかしがっても無駄だよ。

どんなものに仕上がったのか、章はきっと気になって仕方がなくなるはずだもん。

見せてあげることはあたしの優しさだ。



どんな物語にするのか、まだ決めていない。

……ううん、違うね。

どんな物語になるのか、章の世界がどうなるか、まだはっきりしていないから。

だから今はまだ描きはじめる時じゃないんだ。



どうなるかはわからない恋に触れている。

手紙を書く練習をして、何度も繰り返せばいつかはラブレターを書く練習になる。

未来はまだ確定していない、ふわふわとした感覚が嫌いじゃないと思う。

とても、どきどきする。

だから。



……幸せな結末であればいい。

章が笑っていられるような、そんな恋を、あたしも文字にしたいなぁ。



そんなふうに考えながら、章がビジュアルと印象の違いから本が好きなことを隠していたことをさみしく思う。

世の中、そうしてしまうことは少なくないし、おかしなことではない。

だけど、嫌だなぁと思う。



人は、見た目で判断されることが多い。

どうしてだろう。



……どうしてだろう。