似合う、似合わないなんて関係ない。
他人のイメージなんてどうでもいい。
あたしがどう思うか、章がどう感じるか、それだけだ。
他人に惑わされ、左右される必要なんてないと、あたしは思う。
だから本が好きだということも、薫先輩を好きだということも、なにもかも。
章は素直に言葉にしていいんだ。
……いいんだよ。
自分の言葉にはなにも恥じることはない。
だけど黙りこんだままの章になんだかへへっと照れ笑いを浮かべてしまう。
射抜かれそうな視線に少しだけどきどきする。
「ああ……お前は、やっぱりそうだよな」
「え?」
予想外の言葉にまばたきを繰り返す。
なに言ってんだとか、そんな反応を返される心づもりはしていたけど、〝やっぱり〟ってなに?
不思議に思うあたしに対する返事はなく、章はそっと視線を落とす。
「お前らしいよ」
あたしのなにを示しての言葉なのかちっともわからない。
章があたしらしい、なんて思うようなことはなかったように思う。
だけど緩やかに章の唇が弧を描く。
寒さで張りつめたような空気がふわりと柔らかなものになる。
その、わずかに向けられた視線にわけもわからず、ただ胸が熱くなった。