答案用紙が返却されてから1週間。
あたしも詩乃も、戸川も、当初は心配されていた章もみんな赤点はなく、補講とは無縁の平和な日々を過ごしていた。
章とは以前のように別棟の図書室で手紙を書く練習をしている。
内容がめちゃくちゃだったと自分で思ったのか、最近はなんて書こうかと今まで以上に悩んでいる姿をよく見る。
進展しているのかしていないのか、よくわからないところだ。
とはいえ、相手に届けるものに対する思いやりが感じられるから、きっといいことだと思う。
好きなだけ考えたらいいよね。
あたしは見守りながら支えるだけだ。
章の待つ図書室へ向かいながら、跳ねるように歩く。
今日はどんな内容の手紙を章が書くのか、楽しみなんだ。
さっきまでいた教室と廊下の気温差に頰は赤く染まる。
毎度のことながら重たい扉をぐっと体重をかけて開き、奥へと足を進める。
「お待たせ、章!」
そう、本棚の陰からひょこりと顔をのぞかせれば、不自然なほど章の肩が跳ね上がる。
慌てて手にしていたものにペンケースやらなんやら、色々と乗せている。
「日生……」
こんなに慌てているなんて珍しい。
というかそんなに隠すものっていったいなんだろう?
首をひねり考えつつ、それより近づいた方がはやいと机の上に視線を動かす。