数学の眠たい話……もとい、数式の話をBGMに、ふあっと大口を開けたあくびをひとつ。

最近すっかり寒くなったこの季節にはありがたい、太陽であたたかい窓際の席であたしは睡魔と戦っていた。



こんなに眠たいのは、昨日は気持ちが落ち着かず、変に目が冴えて眠れなかったせい。

どうせならと読書をはじめてしまったから睡眠時間はいつもより短くなってしまったんだ。

おかげで今日は授業を受けることがしんどくてたまらない。



古典の授業なら好きな科目だしまだ起きていられるんだけど、苦手科目はどうにもだめだ。

素直に眠い。



あたしの通う北冠高校は近くの学校と比べると、真面目で厳しい校風が特徴で。

その中でも特に厳しい上野先生の授業だから、ちゃんと起きてないとだめなのに。

それなのに昨日とは違う理由で授業に集中できないのは、放課後の金井との会話が原因だ。



結論から言って、彼は別に男が恋愛対象なわけではなかった。

幼馴染も戸川のことではないらしい。

知る人は少ないけど、実は金井と戸川にはもうひとり幼馴染がいるんだって。



それはひとつ年上の菅沢 薫(すがさわ かおり)先輩。

前生徒会書記で、とびきりの美人だと有名な人だ。