ううっとあたしがひとり勝手に悶えていると、その様子を見ていた戸川がふふっと笑う。

顔を上げると視線があい、ぱちぱちとまばたきをする。



「よし、じゃあ区切りもいいことだしちょっと休憩でもする?
特に彩ちゃんは気持ち的にも休憩した方がよさそうだしね」



そうですね!

ごめんね!



戸川の言葉にダメージを食らいつつも否定できる要素がまったくなかったあたしはこくこくと頷く。

赤ペンを拾い上げる元気もない。



「じゃあおれ飲みもの買ってくるね」



気が効くなぁ、さすがチャラ男……と思って息を吐き出したところで。



「彩ちゃんと」

「え?」



なぜかあたしも巻きこまれてしまった。

……いやいや、本当になんで⁈



驚いているのはあたしだけじゃなくて、もちろん詩乃もだし章だって。

ふたりとも戸川に文句を言っているけど、同時に話されてうまく聞き取れない。



まぁ、おそらく詩乃は章とふたり残されるのがいやなんだろう。

あまりの拒絶っぷりにちょっと章が可哀想になる。



そんなことを考えていると、斜めの席にいたはずの戸川がいつの間にかあたしの隣に立って、あたしの手を引く。



「じゃあ行ってきまーす」

「まさかの無視なんだ⁈」



あたしのツッコミまで反応せず、にこにこと笑う彼に連れられ、あたしは教室を出た。