合間にそんな会話を挟みつつ、金井は失礼なばかだなぁなどと冗談交じりに口にすると戸川が「そういえば」と言葉を挟んだ。



「彩ちゃんって章のこと、金井って呼んでいるんだね」



……それがなにか?

なんらおかしなことではないはずなのになんなんだろう。



金井とふたり、きょとんと気の抜けた反応を返す。

思わず動かし続けていたシャーペンをとめた。



「知らないうちにずいぶん仲よくなったみたいだし、てっきり章呼びになっていると思っていたんだけど」



まぁ、そうだね。

前よりはずっと親しくなったと自分でも思うし、呼び方を変えていたっておかしくはない。

考えたこともなかったし、金井のままだったけど。



試験勉強が多少落ち着いたことと、金井がちゃんと真面目に解いた英語のプリントが正解していることを確認したこと。

そんな小さな積み重ねから機嫌がすっかりなおったあたしはちょっとしたいたずら心を出した。



「じゃあ章くん! 全問正解で〜す」



語尾にハートマークをつけたテンションで、わざとらしいほどにっこり笑う。

はい、と丸つけを済ませたプリントを金井に差し出した。

「うぜぇ」などと言いながら彼はひったくるように受け取る。



その頬はなんだか赤みが差していて……なんだ、また照れているんだ。

君はなんだかんだで口が悪いだけだよなぁ。



こんなかんたんに恥ずかしがっちゃって、可愛い。