「よいしょっと」
さぁ、作業に戻ろう。
金井が顔をのぞかせたことにびっくりしてすっかり忘れていたけど、あたしは手紙の書き方について調べている最中だったんだ。
今日はこのまま部室にいるべきか、ここまで来ちゃった金井を引き連れて図書室に行くべきか、悩むなぁ。
そう考えていると、
「……叶えばいいな」
いまだ机に隠れるようにしていた金井から、吐き出された言葉に息をつめる。
背けられるかと思った顔は、さらりと流れた金髪の隙間からのぞいている。
まっすぐな、まっすぐな瞳があたしに向けられていた。
「────うん」
自分でも驚くほど、柔らかな声が落ちた。
優しいね、と吐息がほどける。
あたし、今の今までちょっと怒っていたはずなのになぁ。
……よし、決めた。
金井が書いたこのルーズリーフの手紙の下書きを持って、今からふたりで図書室へ行こう。
悪口だらけの言葉の中に優しさがあるとあたしは知っているから、彼らしさを残して手直しする。
きっと素敵なものになるね。
「ねぇ、金井」
彼の手をつかみ、ぐいと引っ張り上げる。
立ち上がらせるとさっきまでとは逆転、かんたんに見下ろされる。
なんだよ、と言いたげな彼の瞳に映るあたしはにっこりと笑う。
「あたしを頼ってくれて、ありがとう」
不器用な君を知ることができたこと、支えてあげられること。
金井が思うよりずっと、あたしはとても嬉しく思っているんだ。