ずいぶんと日は短くなったと思いつつ、夕日が沈んでいく姿を窓から眺める。
手持ち無沙汰で、髪をくるくると指に巻きつけてはほどく。
掌の力を緩めて、手紙をそっと覗き見た。
今日は1日この手紙のことが気になって、授業どころではなかった。
友だちにも「今日はいつも以上に様子おかしいよ?」って言われちゃったし。
でも、仕方がないよ。
こういうのってはじめてだし、どうしたらいいのかちっともわからない。
小説で何度も見た場面のような、そんなことがあたしに起こるなんて、今でも信じられないんだ。
熱のこもったため息を落とした、その時。
「日生」
背後から聞こえた声。
あたしのことを呼んだそれにびくりと肩が揺れて、つばを飲みこんだ。
ゆっくりと振り向けば、そこにいるのは夕日の光を受けていつも以上に輝く金の短髪の持ち主。
鋭い目つきにシャープな顔立ちで、かっこいいけどどこか危険な雰囲気のある人。
銀のピアスが光を反射して眩しい。
あたしに関わりのない人だと思っていたのに、ちゃんと名前を覚えててくれたんだなぁ。
手紙に書いてあったんだから当然なんだけど、それでも心をくすぐられるみたいだ。
「話って?」
そっと尋ねれば、いつもはつんとした態度でこわい印象の彼が恥ずかしげに表情を変える。
気のせいかな。
目をそらしたあと、あたしの瞳を見つめなおす金井の頬はなんだか赤く染まっているように見える。
その色は夕日のせいだろうとは思うんだけど、でも、それだけじゃない気がして。
思わずつられてあたしも頬に熱が集まる感覚がする。