ちょうどふみが疑問を口にしたタイミングで、席を外していた詩乃が戻ってくる。

そして無言でなにをしていると訴えかけていて……うう、視線がびしばしと突き刺さってますよ。



そうだよね、あたしが今日も図書室に行こうとしていたところをなんとか捕まえたんだもんね。

ひとまず部室に放り込んで、顧問との用事を済ませた彼女は腰を据えて話を聞きだすつもりなんだろう。



淡いグリーンの長机は実験室特有のもの。

部室として借りている、使われない地学教室の上に広げたものをふたりに見せる。



「……『誰でもわかる、手紙の書き方』?」



タイトルを読み上げたふみに対して、そう! と強く頷く。



これはもちろん金井のために用意した資料だ。

普通の手紙さえもうまく書けない彼には、まずはラブレターの前に手紙の書き方について知ってもらおうと思う。

きっとラブレターを書く上で使えるはずだしね。



普段から原稿のためにさまざまな資料探しに取り組んできたあたしだもん、ちゃんとたくさん用意したんだ。

思えばあたしもちゃんと手紙の書き方について知るのははじめてで、結構楽しい。