さっきあたしが書きこんだばかりの1ページ目。

罫線は無視されつつ、ざっと綴られていたそれに驚いてまばたきを繰り返す。

見覚えのあるその字は、金井のものだ。



おそらく、あたしと薫先輩が話していた一瞬のすきに書いていたんだろう。

いつもより乱れた字はそれでもやっぱり読みやすい。



本当にいつの間に書いていたんだか。

まったく気づかなかったよ。



呆れながらもなんだか力が抜けて、ふっと息を吐き出した。



「明日もするんだ」



やる気がなさそうで、面倒そうに見えたのに。

普通の手紙の練習なんていやがってたのに。

それでもやめにするとは言わないなんて、それだけ薫先輩のことを本気で好きってことなんだろうね。



本格的に関わるようになった今日、話す内容は薫先輩のこと。

薫先輩が教室に来てからだって、金井はあたしのことは放っておいて、彼女のことばかりだったし。



彼の恋を叶えるために共に過ごしているんだから当然だけど、でも、いくらなんでも失礼じゃない? とか。

正直少しだけど……思った。



でも、それでもいいかと許してしまう。

あの恋する頬にはそういう魅力が、ある。



恋って不思議だ。

あんなにこわい男の子でさえも、あんなに可愛くしてしまうんだから。