「金井のあたしへの手紙、言葉足らずでひどかったもん。
今度はちゃんと練習だとわかったうえで読むから大丈夫だよ!」
まさに目は口ほどにものを言う。
面倒で仕方がないと言いたげだけど、あたしが妥協しちゃだめだとさっき言ったせい。
金井は文句のひとつも言えなくなっていて。
その分視線で訴えかけてくる。
だけどあたしは気づかないふりで応えた。
「頑張ろうね!」
「…………ああ」
間が長いよ。
大丈夫かなぁと不安に思いつつ、信じてみるしかないと自分を納得させた。
「じゃあ早速、書きこんでいこう」
あたしの言葉にしぶしぶシャーペンを握った金井だったけど、予想もしていなかった人の声に、あたしたちは肩を跳ね上げた。
「……章?」
それは、話題の中心。
金井の想い人────薫先輩だった。
その瞬間、驚くほどかんたんに金井の頬は赤く染まった。
耳まで色づいて、さっきまでの彼とは大違い。
感情が揺らぐ、それもいい意味でだ。
つまらないと言いたげ普段の顔つきとのあまりの差にあたしの口が薄く開いた。
わかりやすいやつだなぁ!