ひゅうと息を吸うと、のどに引っかかった。



日生からの手紙は、彼女の心を表すようにどこまでもまっすぐだ。

小憎たらしい言葉と共に、俺に対する気遣いが伝わって来た。



それが悔しくて、愛おしい。



眉間にしわを寄せるも、ただの苛立ちとは違う。

彼女との3ヶ月を思い出して、胸が騒いだ。



ぎゅうと力のこもった掌の中で、白い便箋にしわが入る。

かすかに指先が震えた。



古い本の香りに、机の上に散らばったルーズリーフ。

日に日に気安くなる会話に、親しいと言っても違いない関係、投げつけあった言葉。

彼女の晴れの太陽のような笑顔。



ああ、そうだ。

俺は日生とふたりで過ごした図書館での時間がとても楽しかった。

……あの時間が、好きだったんだ。



それは薫のためじゃなく俺のためで、いつの間にか、目的はすり替わっていた。

手紙を書く練習のためじゃなく、日生と共に過ごすために。



だから薫へのラブレターはもう、彼女に渡せるものじゃない。

さっきまで胸の中で渦巻いていた違和感を理解して、同時にとても切なく思う。



薫への感情がわからず、まるでうそだったかのようだ。

道しるべを失って、俺はどうすればいい。