だって、想像できない。
ここを出て行く薫の姿はまぶたに浮かぶのに、その隣に立つ自分の姿は見えない。
ありえない、夢物語。
俺は昔からずっと薫が好きで、その気持ちはなにも変わってなんかいない。
なのに違うんだ。
俺の望みはそうじゃねぇって、思ってしまう。
自分で自分が理解できず、戸惑っている俺の顔を見て、薫がふっと息を吐き出す。
「私、お茶でも淹れて来るわ。待ってて」
なだめるように落ち着いて、彼女は部屋からするりと出て行く。
惜しいような、それでいいような、よくわからない心境になった。
重たいため息を吐き出し、天井を見上げてラブレターを入れているポケットに片手を突っこんだ。
かさりという音と、指先に触れた2種類の紙にはっとする。
そういえば、お守りがわりに入れていたんだ。
取り出したそれは、ピンク色の封筒に入った手紙。
色濃いけどオレンジがかった色あいで、かといってサーモンピンクとも違う不思議な色をしている。
ざらりとした紙質の一切柄がないシンプルなそれは、今日の朝、俺の机に入っていたものだ。
差出人は、日生。
薫への告白のことで頭がいっぱいだったから、中はまだ読んでいない。
だけど今の手持ち無沙汰な感覚と、どうしようもない不安から、俺はその手紙の封を切った。