よし! と満足げなあたしを不思議そうに見やる金井の表情は明るいとは言いがたい。

静かな教室ではそんなに大きくない声でも、空気を貫くようにしっかりと届く。



「なにしてんの?」

「恋文を書くための練習用のノートにしようと思って。
実際にしたことや言いたいことを書き出してみたり、必要なことをまとめたり、そうやって作っていきたいんだ」



あたしの考えが伝わり、彼はふーんと頷く。

否定されるかなぁとも思っていたんだけど、そんなことはない。

授業はまともに受けていないけど、意外にも金井は生徒として優秀みたい。



「好きという気持ちを整理するためにも、たくさん書き出しておいて欲しい。
預けておくから好きに使ってね、これ」



安心して頬を緩め、彼にノートを手渡した。

筆記具を出したままの机に置いて、ぱらぱらとページをめくっている。



「どうも」

「うん。あとね、金井はまずラブレターの前に普通の手紙を書く練習をしよう」



さらりとあまりにも自然に言葉を落としたせいで、流しかけていた彼がん? と再び顔をあたしへと。

さっきよりちゃんと意識が向けられている。

いつもそれくらいだと嬉しいんだけどなぁ。