「そうは言っても、参考書なんざ作るどころか開きもしねぇ俺にできると思ってんのか?」

「ばかだなぁ」

「は?」

「そのためにあたしがいる。そうでしょ?」



ない胸を張って、自信満々に笑う。

あたしの信条はとても単純。

〝なんとかなる〟だ。



そうやって理由はなくても信じていることは、悪くないよ。



あたしの態度が気に食わなかったのか、金井の眉間のしわが深くなる。

君はもう少し優しくしてくれるといいんだけど、なんて言えやしないことを思った。



「……じゃあどうするんだよ」



よかった、暴言じゃなくて普通にやりとりができてる。

言い方はひとつひとつきついけど、そこは気にしていたら埒(らち)が明かないよね。



長い両足を投げ出して、彼はため息をこぼすように尋ねた。



「とりあえず、あたしがいつも原稿をする時みたいにしようと思う」



そう言いながら、恋文参考書をぺらりとめくる。

そしていつも使っているピンクのドットのシャーペンをノックし、記念すべき1ページ目に文字を書きこんでいった。



『1.まずは誰かに相談してみよう』



これは、金井があたしに相談してきたことを示している。

今後の行動もここに書いていくつもり。