図書室のカウンター近くの小さな机。
そこにケースを置き、見栄えをよくするために何冊か扇型に並べる。
『文芸部』と『卒業生送別号』と書かれたプレートを立てかけ、雪に見立てた綿で飾りつける。
「今回もまた素敵ね」
「ありがとうございます」
木下先生ファンクラブと言ってもいいほど先生のことが大好きな文芸部員。
丹精こめて作った部誌を褒めてもらい、だらしなく頰が緩む。
みんなしてえへへと笑みを浮かべた。
部誌を設置して、配布期間に入って。
毎日少しずつ、ケースの中の部誌が減っていく。
その瞬間がいつもどきどきして、どんな人が手にしてくれたのかなぁと弾む心音が全身に伝わる。
それがとても心地いい。
文芸部って、いいよ。
とても幸せな機会を設けてくれているんだ。
「じゃあ、今回もお願いします」
頭を下げた詩乃に倣い、みんなぺこりと木下先生によろしく頼む。
承りました、と笑顔の先生ともっとおしゃべりしていたいけど、そろそろ部室に戻ろうかという流れに。
扉を開けて、廊下に足を踏み出そうとした時。
「そろそろまた金井くんが来るわね」
そんな木下先生の言葉に、あたしはぴたりと動きをとめた。