ことん、と小さな紙袋をシールを握り締めたままの章の正面に置く。

これは? と視線で問う彼から目をそらし、うつむいた。



それは、白い本型のパッケージのチョコレート。

ハートをかたどった苺が描いてあり、まるでふみが選びそうな愛らしいものだ。

今までのあたしならきっと選ばなかったようなデザインをしている。



ちなみにふみは数種類の抹茶が使用されているチョコレートを選んでいた。

以前抹茶好きの主人公が出る作品を書いていた時に抹茶スイーツを食べていたふみがわけてあげたことがあったんだと。

それで食べられることがわかっているそれにしたみたい。



自分の差し出した紙袋を視界に入れて、あたしは言葉を探す。

なにも考えていなかったわけじゃないはずなのに、いざとなるとわからなくなる。

なにが言いたい、なにを言えば、告げてしまってはいけないのは、いったい。



彼のためにならないし、いい迷惑。

あたしの感情は他の誰に知られても章本人にだけは言えない。

だけど、ねぇ、これが最後なんだし、……言ってもいいんじゃないの。



だって今がきっと、最後のチャンスなんだ。

章に好きだよって言えるのは、今しかない。