「これは、ふたりで作る参考書だよ」
参考書とは、その名のとおりなんらかの際に参考にする書物のこと。
今回はラブレターを書くための参考書だから、恋文参考書。
我ながら悪くない名前にしたと思うんだけどなぁ。
それなのに金井はなにやら不服そうな表情をしている。
「そういうのより普通に手紙書いていたいんだけど」
「なに言ってんの、ラブレターだよ?
しかも相手はあの薫先輩だよ?」
薫先輩は綺麗なお姉さまといった雰囲気で、学校で1番の美人だ。
そのうえ頭もよくて、書道部所属だっただけあってとても字が整っている。
完璧な彼女の心を響かせることは並大抵のことじゃ無理だと思う。
それに、素直になれない金井の気持ちはすべてラブレターに綴ることになる。
それなら、これ以上ないっていうくらいのものにしないといけない。
「とびきり素敵な手紙を用意するためには、なにかを妥協するなんてだめ」
珍しく真剣な顔を作り、首を横に振る。
だってこれは譲れない、譲っちゃいけないことだから。
想いをのせるものには、後悔はできるだけ残さないで、幸せを目一杯つめこむんだ。