ふっと息を吐き出した。

書き上がった章のラブレターを読んで、緊張をほどく。

便箋をそっと机の上に戻した。



「よく書けてる。いいね」



笑ってそう言えば、章の強張っていた頰から力が抜ける。

安心したようにわずかに口元が緩んだ。



「最初とは比べものにならないよ!
章も成長したねぇ」



うんうん、とひとり頷いていれば、その様子は気に食わなかったのか、章は苦い表情。

いやいやお兄さん、そんな顔されましても事実ですからね。



「だってほら! ここ!
ちゃんと好きって書いてある!」

「それがどうした」

「だってあんた、はじめの頃は嫌いじゃないとか悪くないとか、そんな言い回しばかりしていたじゃない」



ああ、懐かしい。

冬休み明けに久しぶりの手紙を受け取ると、そこにはあたしの作品の感想を書いてくれていた。

あの時章は手紙に、確かにこう書いていた。



『お前の描く話は嫌いじゃない』



章の〝嫌いじゃない〟は〝好き〟という意味がこめられていること、もうあたしはよくよく知っている。

嬉しかったけど、こんな中途半端な言い方じゃあたしへの手紙では許されてもラブレターには使えない。

ラブレターの練習中も度々出てきた言葉にどうしようかと思っていたんだから。