木の模様が埋め尽くされるほど、たくさんの手紙を机いっぱいに広げる。
あたし宛の練習したもの、ルーズリーフにざらしに、いらなくなったレターセット。
そして恋文参考書。
そこに刻んだいくつもの言葉がそこに佇んで、彼女に届けられるものに選ばれることを願っている。
こんなことやあんなこと、色々書いたね。
そんな言葉遣いじゃだめだよって何回注意したことだろう。
自然な章の言い回しで、だけど相手を不快に思わせることがないように気にかけた。
一緒に考えたのは最近のことのはずなのに、どこか懐かしい、そんな文章。
あたしと章はそれらをゆっくりと読み返して、下書きしたものを何度も確認する。
そしてようやく納得できたところで、小さく頷く。
「……これでいこうか」
「ああ」
章がペンを手にして、便箋を手元に用意する。
そして間違えないようにゆっくりと。
今までで1番心をこめるように丁寧に。
ひとつずつ、薫先輩のための言葉が乗せられていく。
カリカリとペンの先が紙とすれる音が、静かな図書室で響く。
その様子をあたしは黙って見守っていた。