同じく今の会話を聞いていたであろうふたりの耳に唇を寄せる。
手を添えて、そっと小さく問いかけてみた。
「ふたりはラブレターって、書いたことある?」
淡々とない、と返す詩乃の隣でふみがえ⁈と短く叫ぶ。
おまけになにもないところでつまずいて、大丈夫か。
ここで暴れるとチョコひっくり返すよ。
腕を支えてあげつつ、彼女の反応にそうかーと声を出す。
「ふみはなんかありそうだもんね。
名前も〝ふみ〟だし。」
「それは関係ないでしょう」
「そうかなぁ?」
「えっとあの……似たようなものなら、はい」
かーっと頰を赤くしたふみがうつむきがちに言葉をこぼす。
ってことはやっぱりあるんだ。
まぁ、ふみって大人しいもんね。
面と向かって言うのは苦手そうなところがあるし、かといって電子機器を活用するようなタイプにも思えないし。
そんなことを考えていると、ふみが静かに空気へ言葉を乗せる。
それはわずかに震えていた。
「私にとって、部誌が恋文です。
あそこに私の想いはつめこんでいます」
「そういえば、ふみの作品はどれも恋愛だもんね」