そんな少し弱々しい……今までの自分にはない考えを抱えたまま、チョコを選ぶ。
恋をするって、弱くなることかもしれないね。
なんて言い訳を心の中でしてみる。
「でも本当に、どれにするか悩んじゃいます」
ふみがえへへ、と恥ずかしそうにはにかむ。
確かに、お菓子や動物や花のデザインのもの、メジャーな丸や四角、お酒の入ったものと種類が豊富だ。
タブレットチョコって、ただの板チョコとは違うの?
表面に模様が刻まれているとはいえ、大差ないんじゃなかろうか。
うーん、チョコレートって奥が深い。
腕を組んで唸っていると、隣にいる他校の学生がフルーツにコーティングしてあるものを手に取った。
「私、これにする!」
「いいじゃん!」
「へへ、あとは手紙書いて机に入れておくんだー」
手紙、と言う言葉に自然と反応する。
ちらりと思わず視線をやって、慌てて目の前のチョコレートと睨みあう。
そうだよね、よく小説で見るもんね。
わざわざラブレターを用意する人が少なくなってきていても、なにかプレゼントにメッセージ程度のものをつけることは珍しくない。
でも、今の人はまともに書くつもりをしているみたいだ。
ラブレターって、意外と廃れていない文化なの……?