普段手紙を書く練習に付き合っていたのと同じ。
彼のために、目に見える形をなさなくても、時間を使うこと。
それが嬉しくて、幸せで。
チョコレートを渡す渡さないはひとまず置いておけば、多分きっと、楽しいよ。
甘くて可愛い、好きの象徴。
自分の手で選び取るのも、悪くないね。
「……ねぇ、ふみ。勇気を出そうか」
「彩先輩……」
「言えない気持ちこめてさ。
ふたりでだったら、きっと頑張れるよ」
一緒に告白しようと決意する少女ふたり。
どこかの小説で見たような場面を自分が体験する日が来るなんて、思いもしなかった。
自分は自分、相手は相手、なんて考えていたあたしも間違いではないけど。
でもそうだね、きっと手を取りあうことでできることだってあるんだ。
だから。
「……はい」
緊張を隠すように、握りこぶしを作ったふみの紅潮した頰に、口元を緩めた。
「うまく渡せなかったら慰めてあげる」
「詩乃さん、買う前から不吉なこと言うのやめてもらっていいですか⁈」
やめてよ!
心折れたらどうしてくれんの!
むきーっと、怒りをあらわにするあたしの隣でふみがこくりと頷く。
さっきまでの青ざめた表情から一転して、リラックスした自然な様子だ。
「その時は、一緒にチョコレート、食べてくださいね」
「わかった」
あーあ、もう。
変なフラグ立てて、知らないから。
ため息を落としたあたしはふたりの背を押して、チョコを真剣に選びはじめた。