駅前のバレンタイン特集コーナーには、女子、女子、女子。あとたまに男子。

幼い子どもと手を引く母親、さすがに時間帯から社会人はいないけど、学生さんがたくさんいてすごい人だかりだ。

戦場、なんて表現を頭の中で思い浮かべていたけど、冗談のつもりだったのに、これじゃ否定できないや。



様子を見回せば、声をあげて楽しそうに盛り上がっている女の子たちとは違い、男子は肩身が狭そうだ。

こそこそとチョコを選び、背を丸めて売り場から離れていく。

赤く染まった耳がくすりと笑いを誘うけど、なんだか応援したくなってしまう。



思わず口元を綻ばせたけど、あたしたちもぼーっとしていられない。

一条に渡したいとふみが思うようなものを見つけ、さらに告白する勇気をも与えなくちゃいけない。

女子高生ってなかなか、忙しいものだね。



「彩先輩、あの、本当に探すんですか……?」

「うん。探す探す」

「え、ええ……」



困惑した声を出すふみの顔をのぞきこむ。

控えめな性格はふみらしいし可愛いところだけど、でもそれじゃ今はだめだよ。



「一条が好きなんでしょう?」

「っ!」

「渡せなくても、大切な人のために選ぶのって、きっと楽しいよ」



にっこりと笑ってみせる。

ねぇだって、相手が喜ぶってわかりきっているんだもん。



ふみだけは気づいていないけど、君たち両片想いなんだよ。

それに一条は小憎たらしいけど、それでもあたしにとって可愛い後輩には変わらない。

ふたりとも幸せになる未来に繋がるんだったら、一肌脱ぐってものよ。