そして今、彼は自分の言葉どおりあたしの隣にいる。



とはいえただぼーっとするのも時間の無駄だしね。

今はラブレターで書きたいことを忘れたり混乱することがないようにまとめている。

本来ならもっとはやくに済ませておくべき作業なんだけど、まぁこうしてゆっくり書き出すことができているんだし、それはそれでいいだろう。



集中している彼は黙りこんでいて、あたしも声を出すことなく自分の原稿を進める。

カリカリとシャーペンの芯が紙とこすれる音だけがする。

その、空間。



ただ隣にいるだけなのに、ただ隣にいることに安心する。

混じりあうふたりの空気が自然とあたしたちを包みこんで、それがとても心地いい。



とくとくと少しだけはやまる鼓動が、優しいときめきをあたしに教えていた。

そんな穏やかな時間を過ごしていた、その時。



きい、と軋む扉の音。

この図書室の利用者はもっぱらあたしと章だけど、ふたりともすでにいる。

つまり……他の誰かがやって来たと、そういうことだ。



章と顔を見あわせ、唇を閉じて図書室に入って来た人の足音に耳をすます。

どうやらひとりじゃない……ふたりみたい。



息をひそめ、自然と身を寄せあった。

肩がとん、と触れた。