「章のせいじゃないよ!
12月の分はちゃんと提出してたもん」
「そうか……?」
「うん、今回はあたしがうっかり忘れていただけ!」
本当なら気にかけていなきゃいけなかったのに、すっかり忘れていたあたしが悪い。
だから気にしないで欲しいし、優しくされたら……困るよ。
章には口が悪くて無愛想で、コノヤロウと思わされるくらいでちょうどいいんだ。
むかつく、と思いながらもそばにいるくらいで。
「じゃあ俺、原稿中もここにいていいか?」
「……あたし、手伝えないけど」
「わかってる。邪魔はしねぇよ」
こくり、とひとつ頷く章に戸惑う。
協力しないあたしに価値はないし、てっきり章は先に帰るとばかり思っていた。
だってそんな、原稿をしているあたしなんて、彼にとってはなんの意味もないだろうに。
「そりゃもちろん、あたしはいても構わないよ」
「……よかった」
ゆるりと頰を緩める彼の姿から目をそらす。
……可愛いなぁ、まったく。
もういいや、なんでも。
だって章の考えていることなんてあたしにわかるわけないし。
そばにいることがこわいけど、同時にやっぱり……嬉しいんだ。
章との時間は、どんなものでも、嬉しいよ。
珍しく素直な彼の前で、あたしは正直な気持ちを呑みこんだ。