「わあ、 今日は彩先輩いるんですね!」



詩乃の見張りの元、ガリガリとシャーペンが折れそうな勢いで文字を生み出していると頭の上から声が降ってくる。

その声の持ち主……無邪気で可愛いふみに優しさを求めて顔を上げた。



「ふみ〜、元気にしていた?
とりあえず抱き締めさせてくれる?」



んー、と腕を伸ばす。

ほんのり色づいた頰に、艶やかな黒髪、丸い瞳のあたしの癒し……いやもう天使だね。

もう少しで触れあえる、というところで、



「先輩、また締め切り破ったんですか」

「うっ」



容赦ない言葉が胸に突き刺さる。

相変わらず優しくないなぁと思い見上げるように一条を睨む。



あんた、ただふみを抱き締めようとしているあたしを阻止するために言ったでしょう。

一条がふみを大好きなことなんか知っているんだから、クールぶったって無駄だよ。

だからね、必要以上にあたしに当たりをきつくするのはやめてください。



「悔しいなら一条も抱き締めたらいいじゃない」

「日生先輩」

「はいはい、そんなこわい顔しないの」

「佐久間先輩が睨んでます」



え。



あたしは学習しないね? と笑う詩乃に連れられ部室の1番角の席へと追いこまれる。

こんなはずじゃなかったのに。