あれから、数週間がすぎて、あっという間に月末を迎えた。

変わらず図書室でふたり、手紙を書く練習を繰り返している。

だけど以前とは変わった部分も、ある。



深く息を吸って、同じ分だけゆっくりと吐き出す。

緊張しているかのようにざわめく胸を抑えつけ、表情はなんてことない自然なもので固定する。



まさか、今さら章と過ごすことにこんなにも動揺する羽目になるとは思わなかった。

単純なのか複雑なのか、1度気づいてしまった感情を誤魔化すことは難しく、どうしたらいいかわからない。



生まれてはじめての恋は、あたしなんかの手に負えないものなんだ。



だけど、それでも捨てることもなかったことにもできない。

章から距離を取ることなんてありえないし、してたまるか! という気持ちだけで身を立て直す。



口々に言葉を交わすクラスメートの間を抜け、章との待ち合わせ先……図書室に向かおうとした瞬間。

腕を掴まれてしまい、あたしは驚いて足をとめる。



「詩乃?」



きょとん、と目を丸くしたのもつかの間、じとりと睨みつけている彼女の姿にびくりと肩を揺らす。



これは確実にあたしがなにかをやらかしたんだろう。

そうじゃないと詩乃がこんな態度を取るはずがないもん。



「締め切り」

「……ああっ!」

「昨日なんだけど」



端的で、とてもわかりやすい言葉に短く声を上げる。

冷や汗が背中で一筋の線を描く。