ある日の昼休みにその場所に行くと
鍵がかかっているはずの扉が開いていた。
舞子は不思議に思いながら
屋上に足を踏み入れると
そこには一人佇む女子生徒がいた。
舞子と彼女の視線が交わり
どちらからともなく会釈をした。
「いつもは鍵がかかっているんですけど・・・」
 舞子は訝しげに言った。
「私、鍵を開けることができるんです」
 と彼女はこともなげにそう言ってから
「教室には私の居場所がなくて・・・」
 と言って寂しげな顔を舞子に向けた。
「私もそうなんです」
 舞子は共感した。
会話が弾んだように思ったが
不思議なことに後で振り返ってみると
その時どんな話をしたのか思い出せなかった。