強姦のことは
まるでなかったように
野田と楽しく会話する
自分自身に苛立った

……けど

あの悪夢は忘れなければ
いけないような
封印すべき事実のような気がした
あのことを口にすると

一千万円がもらえないような───

それでいて
アイドルになる夢が
こぼれていきそうな気がしたから───



食事中
野田がわたしを褒めた
これ以上ないほど褒めちぎった
だがいくら素敵なわたしでも
いきなりアイドルや女優で
デビューしても売れないといわれた
ポッと出で終わるだろうと

わたしは頑張りますと語気を強めていった
野田はみんな頑張ってるんだと答えた
グラビアでデビューする子も
沢山いる
しかし売れるのは一割にも満たない
それほど
芸能界は厳しいものだと教えられた