きつねとの
結婚資金にしようと思って
内緒でこつこつ貯めてきた

預貯金を
すべておろし

ホストクラブ
『レオン』にきた

複雑に揺れる
さまざまな感情を
落ち着かせるには
ホストクラブしかなかった

高級酒を
次々頼んで
お姫様気分を
存分に堪能した

その晩
あたしは
有り金すべてを使い果たした

店を出ると
外は明るくなっていた
カラスが
ゴミ袋をついばんでいる

とぼとぼ
道を歩く

歩道橋の
階段をあがっているとき
急に虚しさが
胸を絞めつけた

歩道橋の上から
眼下に広がる
車群に飛び込んで
死んでやろうかと思った

ポケットの中から
携帯をとりだす

着信履歴には
実家から11件
南 恭子から6件
入っていた

あたしは
その場で
携帯を
たたき折って
遠くに投げ捨てた