どれだけ
きつねを傷つけても
あたしの心は晴れなかった

彼の身体に
どれだけ傷ができようが
頭から血を流そうが
顔が腫れようが
口から血を吐こうが

あたしは
暴力をやめなかった

「やめなさいっ」

急に
背後から
あたしは
はがい締めにされた

振り向くと
そこには
『南 恭子』がいた

「これ以上やったら
 彼は死んでしまうわっ」

「なんで
 あんたが
 ここにいるんだよっ」

あたしは
肩で荒い息を吐きながら
詰問した

「ひつじっ
 出て行きなさい
 彼を病院に連れていくわ
 出ていきなさいっっ」

はぁはぁはぁはぁ

足下をみると
きつねが
ぐったりと床に伏していた

『南 恭子』は
合鍵を使って
部屋に入ってきた
あたしも持ってない
合鍵を使って……

すぐに
二人の関係に気づくと
あたしは
いたたまれなくなって
部屋を飛び出した

なによっ
ずっときつねに
利用されてたんじゃんっ
両思いだと思ってたのに

これじゃあ
あたし
ティンカーベルと
一緒じゃんかっ