「あたしは
 『椎名 ひつじ』
 あんたの先輩
 よろしく」

そういうと
庵 ねるは
席を立って
よろしくお願いします
と改めて頭を下げた

「デビューしたんだってね
 おめでと
 仕事慣れた?」

「あ、はい
 ありがとうございます
 なんとか慣れた…かな
 えーと…椎名さん…」

「ひつじでいいよ
 ねるちゃんて彼氏いるの?」

「えっ
 いえ、そんな全然です…
 いまは仕事でいっぱいだし
 彼氏をつくる
 余裕なんてないっていうか…
 あの……ひつじさんは?」

「いるよ
 超かっこいい彼氏
 結婚の約束もしてる」

「わぁ
 すごいですね
 うらやましいです」

「でも
 ねるちゃんみたいに
 可愛かったら
 言い寄ってくる男多いでしょ?
 この業界だとやらせろとか」

「あ、でもそれは
 全部南さんが…」

あー、南 恭子ね
あたしも業界に入った
当初マネージャーとして
紹介されたっけ

いろいろ
説教がましくて
なにかにつけ対立してたから
野田に頼んで担当から
外してもらったけど

いまでも
時々あたしの家に来るのよね
ご飯作ったり
悩み事はないかって
親身になってくれるんだけど

ウザいだけ

庵 ねるみたいに
なんでもいうことを聞くタイプなら
南と相性良さそうよね