「はじめまして
 国税局の矢嶋 文雄といいます」

用意した名刺を
南 恭子に手渡す

外国の血が混じった
目鼻立ちの整った
美しい女だった

「父の件で用とは
 なんですか?」

「単刀直入に申します
 貴女の父親である勇次郎氏は
 脱税及び汚職に関わったことで
 マークされています」

南 勇次郎の経営する
内部資料
それと
敢えて
彼のプライベートの
女性関連の写真などを
包み隠さず
南 恭子の前で晒した

彼女は
驚きの表情を
隠せない様子だ

「この資料が表立つと
 勇次郎氏の逮捕は
 時間の問題でしょう
 そうなれば
 貴女の会社の株価が
 下落するのは必至
 経営破綻起こす可能性も
 視野に入れなければ
 いけないでしょうね」

「……あなたの望みは?」

彼女の声は
かすかに震えていた

「これら全てを
 三千万で買って頂きたい」

私が
三千万という
値段を要求するのには
理由がある

経営者にとっての
三千万は
高すぎず
安すぎない
妥当な値段なのである

いわば
社長のポケットマネーで
直ぐに支払える値段なのだ

予想通り
彼女は
私の要求をすんなりのんだ