あたしも何度か
ガラスの靴に足を運んだ

支払いは全て
きつねが持ってくれた
「お前には払わせたくない」
ぶっきらぼうにいう
その言葉がすごく嬉しかった

彼がホストクラブで
働き始めて一ヶ月
最初の給料が6万円だと聞く

えっ?
彼の言葉を疑った

6万て……
普通に生活するだけでも
苦しいし
どうしようもないじゃん

だけど
きつねは弱音を吐かず
前向きな言葉が並ぶ

そんな懸命に生きるきつねに
あたしはさらに惹かれ
どんどん好きになっていった

冬の扉が開きはじめた頃
きつねが出勤する前に
あたしは彼に逢いに行き
思いのたけを告白した

「き…きつねが好き」

言いたいことは
たくさんあった
……けど
うまく言葉がでなくて
ありふれた一言で
片付けてしまっていた

もっと好きって気持ち
伝えなきゃ
って頭の中で考えていたら

きつねが
無骨な声で

「なにいってんの
 俺たち
 もう付き合ってんだろが」

と一蹴し
あたしの前から
去っていった

その場に取り残された
あたしは
思わず泣き崩れてしまった

彼の言葉が
あまりにも
嬉しかったから