「すいません
 ちょっと携帯貸してくれませんか
 どこかに無くしてしまって……
 自分の携帯に電話したいんで……」

突然彼が声をかけてきた
焦りの顔が見てとれた

モデルみたいに背の高い人

「あ、どうぞ」

彼の慌てた表情に
あたしは思わず携帯を手渡した

しばらくあたしも
彼の携帯を一緒に探したが
どこかに忘れたという携帯が
見つかることは無かった

彼はあたしに
礼をいうと
肩を落として帰っていった

服飾の専門学校に通い始めて
一年目の秋だったかな