「やっぱり……ジュンだ」





声のする方へと走った先にいたのは、間違いなく、アムスで出会ったジュンだったんだ。

居酒屋街に入ってすぐあたりの、小さな噴水の広場の隅に、人だかりが出来ていた。

その中心にいたのは、アコギを抱えて歌っている、ジュンの姿だったんだ。



あの時聴かせてくれたままの、心に沁みる歌声が、小さな広場を突きぬけ、通りまで響き渡っていたんだ。

やっぱり歌っているのは日本語の歌で、取り囲んだドイツ人は歌詞も分らないだろうに、みなその歌声に陶酔しきっている様子だった。



私はその歌が終わるまで、しばらく後の方で、ただその歌声に浸っていたんだ。

ふと気付くと、隣にはアキも立っていて、黙ってその歌声の主へと、鋭い視線を送っていた。



歌が終わり、一瞬静寂に包まれたかと思うと、次の瞬間には盛大な拍手やら、口笛やらで小さな広場は一層賑わいをみせた。

その中心でジュンは大袈裟にお辞儀をしながら、チップをくれる観客やらに、愛想を振りまいている様子だった。