「アキは、なんで、一人旅をしてるの?」


アキは、通りを行く人々を眺めたまま、遠くへ思いを馳せているようだ。


「ドイツは、俺の育った所なんだ。家族でよく旅行もしたし、最後にもう一度見たくなってね」





最後……?

今は、イギリスで仕事をしていると言っていたけど、またどこか、遠くにでも行ってしまうのだろうか?

心地よく酔いの回った頭で、私は、そんなことを思ったんだ。

もしかしたら、今後は日本に拠点を移したり……なんて、そんな少し都合のいいことを考えたりしながら。



「ドイツは、私も大好きになったよ。街は綺麗だし、人は優しいし、ソーセージもビールも最高に美味しいし!」


私が上機嫌でそう言うと、アキは「あぁ」って自分のことのように、嬉しそうに微笑んだんだ。