荷物を置いた私たちは、再び街へと出かけた。

「行きたい所があるんだ」とアキが言うので、私は素直についていくことにした。

だいぶ薄暗くなって、お腹もすいてきた。



アキに連れてこられたのは、ユースからほど近く、マイン川の左岸、博物館やらの裏側一帯で“ザクセンハウゼン”と呼ばれる地域だった。


「なに、ここ?今日は何かのお祭りなの?」


通りを埋め尽くす飲食店の前には、テラス席が設けられていて、人で溢れかえっている。

テラス席なんて言っても、パリで見たようなこじゃれたものではなく、木の椅子とテーブルといった素朴な風合い。

通りを見上げると、頭上には小さな旗が延々と両脇に渡されていて、本当にお祭りみたいだ。

でも、隣のアキは「いつもここはこうなんだ」って満足そうに笑ってたんだ。



どこからともなく、アコーディオンの音色や人々の歌声が聞こえてきて、とにかく賑やかと言ったらありゃしない。

ここは、地元の人たちの集まる居酒屋街のようだ。

お店があり過ぎて、どこに入ろうか迷ってしまう……かと思いきや、アキは、迷うことなく一軒の店へと入って行った。

私も慌ててついて行くけど、アキはスタスタと店の奥まで進み、店主らしき人と親しげに挨拶を交わすと、すぐに私の所へ戻ってきた。

すると「こっち」と言って、通りのテラス席へと案内された。