「私には、夢なんてないよ。なかった。でもね、今は、探し中」

「探し中?」


ジュンは顔を上げ、私の目を覗きこんでいる。


「うん!パリで、すっごく素敵な女の子に出会ったんだ。その子に言われたの。夢を見つけなって。それで、夢を見つけたら、みんなに言いふらすんだって。夢を見るのは自由だから、言ったもん勝ちって、その子は言ってたよ。私も、その言葉、信じてみようと思ってさ」

「ふーん。その子の夢って?」


ジュンの目に、少し力がこもったように見えた。


「彼女は、物書きになりたいんだって。いろいろ投稿してるらしいんだけど、まだ芽は出てないって。でもね、彼女は、夢に向かって突っ走ってる感じ。それがキラキラしてて、眩しくて、羨ましかった」


ジュンは、グラスを静かに置くと、少し遠くを見ているようだ。


「ほんまやな。そんな堂々と語れるなんて大した女やわ。カッコエエなぁ」

「しかもその子、とっても美人なんだよ」


そう付け加えると「そんな子どこにおんの?俺も会いたいわぁ」って、ジュンはそれは悔しそうに、泣き真似をしたんだ。


私は、その様子が可笑しくて、またひとしきり笑った。