「別に、俺が、女買いに来たんとちゃうわ。観光客なんか行ったら、めっちゃぼられるだけやし、って、そうやなくて、これはガイドブックにも載ってる“飾り窓”ちゅうもんや。こんなん、女の子だけやったら、見に来れへんやろ?だから、せっかくやし、と思って……」
なんだか、母親に怒られた小学生のように、早口で言い訳するジュンが可笑しくて、思わず吹き出してしまった。
「確かにビックリしたけど、これは私一人じゃ、一生見に来れなかった。だからいいよ、そんなに謝らなくて」
「ホンマに?やっぱ、レイは優しいなぁ」
そういって、今度はオーバーなほど喜んでる。
「でも、この国の夜は、ホンマに危険やから、女の子一人は厳しいねんで。売春もドラッグも合法やし。一人やったら、きっと、恐い目におうてたかもしれへん」
今度は、まるで父親にでもなったかのように、真面目な顔でジュンは言った。
でも、その真面目な姿も、なんだか演技臭くて笑ってしまうのだけれども。
「そうだね。ジュンと一緒でよかったよ」
私がそう言うと、ジュンは「そうやろー!」って満足そうに頷いた。