その途中も、ジュンは、途切れることなく喋り続ける。
「あんな、あそこに“Coffee Shop”ってあるやろ?」
「うん、カワイイお店だね」
「ちゃうちゃう、あんな、この国で“Coffee Shop”言うたら、薬も売ってんねんで!」
「薬?」
「そうや、マリファナや」
「えぇ~?そうなの?」
そして、驚く私を見て、嬉しそうに笑うんだ。
「ほんまレイは素直やなぁ。いちいち反応がオモシロ過ぎ」
「だって、“Coffee Shop”なんて書いてあったら、普通に入っちゃうでしょ?」
「ハハハ、大丈夫やって。別に押し売りされるわけやないし。欲しい、って言う客にだけ売ってくれるんやて」
「そうなんだ」
「そ。“Cafe”って書いてある所なら、コーヒー以外の刺激物はおいてないから、レイでも安心して入れるで」
そう言うと、また、面白そうなものを見つけては、すぐに寄って行って、誰彼構わず話しかけたりもする。
英語は結構得意らしいが、英語の通じないオランダ人にも、大袈裟な身振り手振りで会話してて、それがなぜか通じているようだから驚きだ。
どこでそんなに情報を仕入れるのか聞いてみると、ユースで同部屋になった外国人や旅先の地元の人々ともすぐに仲良くなって、いろいろ教えてもらえるんだと言っていた。
ジュンを見てると、すごく不思議だ。
話す人みんなが、昔からジュンのことを知っているみたいに親しげで、とにかく笑顔になってしまう。
彼の回りには、いつもスポットライトが当たっているように華やいでいて、賑やかなんだ。